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県産みその発展に関わった人物伝/今井誠一さんインタビュー Vol.6

Posted on 2021年3月25日

by MADE IN NIIGATA


——厚生労働大臣(旧労働大臣)または新潟県知事が表彰した「名工」7名に共通していえることは何ですか。

新潟県みそを語る場合絶対に必要な方々として最初にあげられるのが「名工」です。

私が思う共通点は、まず感性が鋭いこと。酒蔵の名杜氏と同じですね。そしてみそ以外、特に食べ物に関しても関心が高く、知識が豊富です。私が教えられたこともずいぶんありますね。例えば、当時スーパーなどで買ったナスやキュウリ、レンコンの品質をある「名工」に見てもらったら、レンコンは全然ダメだと。後でご本人が栽培したものを送ってくれました。農業関係の本なども読んで勉強しているようでしたね。

ほかには、全国的に開発された技術を、自社の現場に適応させる能力がある。開発技術を現場に即してアレンジする力に長けているんですね。それにはまず自分で消化し、その上で、こなした事柄を現場の方々に教え、チームで “わざ”の向上を達成する必要があります。これが技能※なんですよね。みそ作りもチームワークが重要です。

※技能:その人でなければできない“わざ”。技術:科学で解明された手順どおりに実施すれば、誰でも再現できること。

〈参考〉本県みそ業界の「名工」 敬称略

——「名工」以外で、技術面に貢献した人物は?

前述の「半煮半蒸」の技術を開発した本間伸夫さんです。当研究所に10年間在籍し、みそ研究と技術指導に従事しました。みそ研究では、全国において初めてみそを真に科学的に研究した人といえると思います。主な研究としてはみその糖質の研究、タンパク質分解酵素の測定法の開発、「無菌仕込み法」による微生物の作用究明などがあげられます。「新潟県味噌技術会」の実質的創設者でもあります。

佐渡みその研究では、中川七三郎さん(故人)。佐渡工業研究所の技師を経て、県立農業高校の食品加工科などの教諭になった人で、佐渡みその技術に精通していたことはもちろん、みその官能評価に長けていました。私もその教えを拝受した一人です。

「これからの発酵食品業界への期待」へとつづきます。


(プロフィール)

今井誠一(いまい・せいいち)

農学博士。1937年に燕市吉田(旧西蒲原郡吉田町)で生まれる。新潟大学農学部卒業後、新潟県食品研究所に入所。みそやしょうゆなどの大豆発酵食品の研究及び技術指導に従事。93年には、科学技術庁長官賞を受賞。90年から95年まで所長を務め、同年退職。全国味噌鑑評会審査員を31回務める。新潟県味噌工業協同組合連合会顧問、全国味噌技術会常任理事を歴任。著書は『食品加工シリーズ 味噌-色・味にブレを出さない技術と販売』(農山漁村文化協会)、『みその絵本』(同)。


〔聞き手・文〕

高橋真理子:群馬県出身。大学卒業後、絵本、生活情報誌『レタスクラブ』編集部を経て、結婚を機に新潟へ移住。フリーの編集・ライターとして『るるぶ』『新潟発』に関わり、新潟の食と酒の魅力を伝える出版社・株式会社ニールを設立。『cushu手帖』、『新潟発R』を発行。著書は『ケンカ酒 新潟の酒造り 小さな蔵の挑戦』。現在も四季折々の新潟の美味に感激し、堪能する日々を送る。



〔お問い合わせ〕

今回の取材は、新潟県雪国の発酵食文化発信事業の一環で取り組みました。

新潟県農林水産部食品・流通課
025-280-5963