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乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」を知る Vol.2/乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」とは
Posted on 2021年7月18日
by MADE IN NIIGATA
日本酒を搾ったときに清酒とともに生まれる酒粕は、「カス」の名は付けども、栄養価が高く、機能性にも優れた素晴らしい食品です。その酒粕が廃棄されるなど、行き場を失っているのが「もったいない!」という思いから開発されたのが、乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」。
生みの親である新潟県醸造試験場長の金桶光起さんと、さかすけ推進協議会委員長を務める緑川酒造の瀨戸晶成さんに、「さかすけ」の開発経緯や特徴、現状、将来について伺い、その魅力に迫ります。
——乳酸菌醗酵酒粕「さかすけ」を開発したきっかけは?
金桶 「もったいない」という思いからです。新潟では日本酒を造るときに60%以上、だいたい58%くらいまで米を削ります。そうすると、使う玄米のうち4割はぬかとして捨てられ、残りの58%からさらに約50%が酒粕になる。とてもぜいたくに、高品質な清酒を造っているので、大量の酒粕が出てきます。この栄養価が豊富な酒粕を有効に、人が食べやすい形にできないだろうか、というのがきっかけでした。
——金桶先生ご自身がそう思ったのですか?
金桶 そうですね。私は岐阜の高山地方の出身で、小さいころから酒粕が食材として普通にあり、食べていましたから。でも今は酒粕自体を見たことがないという人も増えていますし、スーパーで売られていても棚の隅っこに置かれ、探さないと見つからない場合も多い。
これをもっと食べやすい形にして、栄養のある食べ物として気軽に摂取できたらいいなと思いました。
——小さい頃は酒粕をどのように食べていましたか?
金桶 まずは甘酒ですよね。それから昔は石油ストーブを使っていたので、その上に網を置いて、板粕を焼いてそのままおやつに食べていました。漬け物に使われる熟成粕はご飯のおかずに。ちょっとしょうゆをたらして食べると、すごくおいしいんですよ。
瀨戸 米に米ですね(笑)。
——「さかすけ」の研究を始めたのが平成13年。今から20年も前になるのですね。最初から乳酸菌を使うと決めていたのですか?
金桶 そうですね。なぜ乳酸菌かというと、機能性食品の半数以上が乳酸菌製品なんです。乳酸菌には安全というイメージもあります。さらに、酒蔵は昔から、酒造りに欠かせない乳酸菌にはなじみがありますし、酒蔵は発酵装置を持っています。乳酸菌の機能性、人にとっての安全性、イメージ、設備などから、受け入れられやすいと考えました。
——開発までの経緯を教えてください。
金桶 まずは酒粕を乳酸菌で発酵できるかどうか。もともと別の研究目的で集めていた、試験場保存のおよそ300菌株で乳酸菌発酵を試してみました。その中で発酵できるものを選別し、その後はおいしいかまずいかで判断し、最終的に15菌株に絞り、フレーバーや酸の出方、味などさまざまな特徴、機能性を調べ、3菌株をセレクトしました。
(表 新潟県酒造組合のサイト参照。)
さかすけ製造に使用される独自の乳酸菌
SK-4菌(さかすけ菌K-4)
醸造試験場の酒粕から分離した乳酸菌(ラクトバチルス プランタラム)で、生きて腸まで届きSV-8菌とともにマウスのアレルギー性鼻炎を抑え、ラットの肥満抑制作用があります。
SV-8菌(さかすけ菌V-8)
醗酵乳から分離した乳酸菌(ラクトバチルス ブレビス)でSK-4菌とともにマウスのアレルギー性鼻炎を抑える効果と、血圧上昇抑制作用やリラックス効果などがあると言われるGABA(ギャバ:γ-アミノ酪酸)を生産する能力があります。
SH-10菌(さかすけ菌H-10)
家庭の漬物から分離した乳酸菌(ロイコノストック メゼンデロイデス)で、抗腫瘍作用があるとされる多糖(デキストラン)を生産します。
——3菌株のうち、現在県内酒蔵で使用しているのは?
金桶 主にSK-4菌(さかすけ菌K-4)です。酸が上がりやすいという特徴があります。
——開発過程で苦労されたことは?
金桶 私は淡々と研究していたので、それほどの苦労はありませんでした。苦労は出来上がった後ですよね、瀨戸さん。
「さかすけ推進協議会の取り組み」へとつづきます
(プロフィール)
金桶光起(かねおけ・みつおき)
昭和37年(1962)、岐阜県高山市生まれ。岐阜大学大学院修士課程修了後、乳業メーカーに勤務。その後大学院の博士課程を修了、農学博士。平成7年に新潟県醸造試験場に入庁し、微生物や乳酸菌、日本酒の異臭などを研究。平成28年に新潟県醸造試験場第7代場長に就任。
瀨戸晶成(せと・あきなり)
昭和34年(1959)、神奈川県藤沢市生まれ。中央大学理工学部卒業後、工業系メーカーなどを経て、平成7年に緑川酒造入社を機に、妻の実家がある新潟県に移住。管理部部長。さかすけ委員会では準備委員会時代から現在まで委員長を務める。新潟清酒学校講師(数学・物理・化学担当)。
〔聞き手・文〕
高橋真理子:群馬県出身。大学卒業後、絵本、生活情報誌『レタスクラブ』編集部を経て、結婚を機に新潟へ移住。フリーの編集・ライターとして『るるぶ』『新潟発』に関わり、新潟の食と酒の魅力を伝える出版社・株式会社ニールを設立。『cushu手帖』、『新潟発R』を発行。著書は『ケンカ酒 新潟の酒造り 小さな蔵の挑戦』。現在も四季折々の新潟の美味に感激し、堪能する日々を送る。
〔お問い合わせ〕
今回の取材は、新潟県雪国の発酵食文化発信事業の一環で取り組みました。
新潟県農林水産部食品・流通課
025-280-5963
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